立場性と権威について―金明秀さんのコメントへの応答

先日、大学教員の要望書について転載したエントリーに対して、金明秀さんからコメントをいただきました。コメント、ありがとうございます。

(追記更新)「高校無償化」措置を朝鮮学校に適用することを求める大学教員の要請書
http://d.hatena.ne.jp/kiimiki/20100314/1268549643

いつものように応答が遅くなってしまいましたが、もう一度この要望書について考え、自分なりに整理しました。長くなってしまったので、新しいエントリーを立ち上げましたことをご了承ください。

大学教員の要望書について、私は、大学教員という枠だけで賛同を募ることに対して指摘しました。同時に、自分の中に権威主義が植えつけられていることを述べました。

それに対して、金明秀さんからのコメントは、以下の通りです。

追記の内容にはちょっと違和感があります。

第一に、一つの運動メディアに参加できないことで疎外感を抱くのはわかりますが、運動参加者の気持ちは(それが権威主義であれ疎外感であれ)当面、考慮すべき事柄ではないと思います。大事なことは、運動(この場合は署名)に社会的な効力を持たせることであり、ひいては朝鮮学校を無償化の対象とすることです。

第二に、こういう短期的な課題の運動では、手段が妥当かどうかよりも期限内に成果を期待できるかどうかのほうが重要でしょう。成果に結びつけるために、できることはなんでもやるべきです。もし大学教員の社会的な威信が利用できるのなら、いくらだって利用すればいいのです。

第三に、短期的に資源を有効に集約方向として「大学教員」というカテゴリーに注目するのは、むしろ当然といってもいいと思いますよ。わずか数日の猶予で資源を集中しようとするなら、大学という組織があって(つまりメンバーシップが明確で)、みんな電子メールを利用している大学教員は情報伝達にうってつけです。それに、一般市民を対象とした署名だと1万人だってたいした人数ではありませんが、大学教員だと千人でそれなりの重みを持ちえます。

第四に、逆に言うと、一般市民を対象とした署名活動は、この短期間では事実上、無理です。3月末の政治状況次第では、4月はじめに一般向けの署名活動を組織する案も浮上してくるでしょうけど、今のところは運動資源の無駄遣いにしかならないと思います。

以上。本末転倒ではないかな、という指摘でした。


金明秀さんのコメントより
http://d.hatena.ne.jp/kiimiki/20100314#c1268670755

私が最初にこの要望書の知らせを受け取ったとき、要望書の趣旨として、すでに朝鮮学校出身の学生が多く在籍している大学の「大学教員という高等教育に携わる者の立場において」、その責任を果たそうとするものであると認識しました。

過去のエントリーで少し触れましたが、大学受験資格問題における運動で、まだまだ課題は残っていますが、朝鮮学校出身者の日本の大学に受験する権利は獲得されてきましたし、その際に朝鮮高級学校の教育課程が日本の高校に類するものだとしてすでに認めています。それゆえ、今回の朝鮮学校外しは、そのような運動の蓄積を否定するばかりか、教育の在り方をも否定するものであります。

大学受験資格問題において、2003年に「民族学校出身者の受験資格を求める国立大学教職員の声明」というものが出されています。これは、文部科学省が、国立大学でアジア系の外国人学校だけを認めないという方針が出されたときの声明です。そこには、

私たちは国立大学教職員として、自分たちがこの問題に責任ある立場に置かれていると考えます。そうであるからこそ、文部科学省の政治的判断に対して、大きな危惧と疑念を抱かざるをえません。/私たちは民族差別の「加担者」になることを拒否します。

民族学校出身者の受験資格を求める国立大学教職員の声明」より
http://www.jca.apc.org/~komagome/seimei_index.html

、とあります。
このときも1000名以上の教職員とその他の関係者が賛同され、とても大きな成果を生む結果となりました。今回、短期間で賛同がこれほど集まったのも、その際のネットワークが、連続していると思われます。今回もこうした不当な措置を容認できないとして立ち上がったのだと察します。

今回は、「大学教員」となっていますが、2003年の大学受験資格の際には、「教職員」となっていましたので、上記のようなメッセージや立場というものが分かりやすかったという印象を持ちます。「職員」も受験者の入学審査という業務を担いますし、その意味で「当事者」だと思います。しかし、「教員」と立場が異なるゆえに声を上げにくい状況があるので、なかなか連帯は難しいかもしれませんが、このような可能性もあり得たのではないかとは思います。

そうした趣旨や背景を踏まえて、私個人としては今回の要望書の権威性というものとまずは切り離して、理解を示す方向として考えます。しかし、「職員」との連携という点も含めて「大学教員」という枠のみであることで、立場性が分かりにくく、権威と結び付けて考えてしまったことは否めません。実際に、それだけでマスコミは取り上げますし、一般民衆は期待を寄せます。やはりその「威信」は放つでしょう。その立場にたつものは、そこに自覚的になってほしいし、正しく使い振舞ってほしいし、何かを考えるときにはできるならその壇上からおりてきて一緒にやりたいと願うばかりです。

一方でこのようにも思います。権威の問題としては、どちらかというと私自身の問題だろうと。何かの地位についたから権威があるとかではなく、その地位や人に権威を与えているのは周りの人であると思います。権威を欲しがる人は、よりたくさんの人が権威を与えている地位へのぼりたいと思うでしょう。もし、その権威を許さないと思うのなら、私自身がそれに対して権威を与えないという姿勢であるべきだというふうに思います。公権力に対してもそうです。権威かどうかは、受け止める側の問題ともいえるでしょう。

今まさに目の前の問題が差し迫っている中で、「利用できるものは利用する」という発想に至ることはよくあることですし当然のことだと思います。私は、それを否定しませんし、私もついついそう考えてしまいます。しかし、それも先述したように、結局権威を与えてしまうことにはなるのだろうなと思っています。実際、とても複雑で揺れる思いでいます。

私自身は、ただの学生で「権威」も何も持っていませんが、自分に置き換えたときに思うことがあります。在日朝鮮人学生といろいろな取り組みしていく中で、日本人―朝鮮人(と二項対立的に語ることはあまりしたくないし、実態として難しいと思いますが、いったんその立場を固定させていただきます)という社会的に非対称な関係において、在日朝鮮人が日本人に対して何も言えないという力関係があると思います。私のいたコミュニティは、わりと日本人に対し厳しく問うというやり取りをしてきたし、私もその中で鍛えられてきました。しかし、こういった問題に携わる日本人学生が本当に少ないので、とても重宝されてしまいますし、情勢が厳しくなるとよりその傾向は強くなります。確かに、日本人学生の存在は、身近な学生や世論に訴えるときに、大学教員とまではいかないですが多少の影響力を持つことになります。そして日本人学生が行動を起こせば起こすほど、大事な存在になります。在日朝鮮人の声を受け止めようとしない社会状況・構造が背景にあるわけですが。

そういう中で、私は、自分の存在を利用できるなら利用するだけしてほしいと思っていました。実際に利用しようとしていたかどうか分かりません。たとえそうだとしても、ほとんど効果もないし、たいしたことはできませんでしたが。しかし、そのような期待に必死に応えようとしていく姿によって、自分が「権力」を持ってしまっているのではないかと不安になりました。この人は行動する数少ない日本人学生だからとして、私が、何かおかしなことを言っていても、何も言えないのではないか。私が何か言ったことで、圧力になっていないか。そして、感謝されてしまうという捻じれた関係になってしまうのです。これは、関係性の問題でもあります。利用―被利用という関係性は、過去からずっと 繰り返されてきました。支援―被支援という関係でも同様のことが言えると思います。

だからということでもないですが、どのような立場の人がアクションを起こしても、それは対等に「重み」があるのだと信じるべきではないでしょうか。

緊迫した状況の中で、いろんな人を配慮することは難しいと思いますが、運動にもさまざまな人が集まってきます。目的のために手段や過程を考えている余裕はないかもしれませんが、そのさまざまな関係や空間を切り捨ててきたから、運動が後退してきたとも思うのです。何かを達成するために、誰かを切り捨ててやる運動が、社会をよくするとは思いません。世界で一番その問題だけが重要なのではないのですから。

(追記更新)「高校無償化」措置を朝鮮学校に適用することを求める大学教員の要請書


「高校無償化法案」をめぐる報道も入り乱れています。朝鮮学校を対象にするかどうかは先送りとなり、まだまだわからないといった状況です。ただ、第三者機関を設けて、客観的に高校に類するかどうかを判断するとか、そのやり方に不安を感じずにはおられません*1。除外を免れたとしても、不当な教育内容への介入がなされるのではないかとか。

大阪府橋下知事は、最近、大阪朝鮮高級学校に足を運び、朝鮮総聯との断絶などを要請し、さもないと府からの助成金も打ち切るというようなことを告げました。さらに高校無償化に関しても同様の条件を下しました*2。脅迫にも値するようなこのような行為を許してはいけないと思います。後に紹介する要望書にもあるように、いまいちど「子どもの権利条約」を思い起してほしいと思います。

子どもの権利条約」(1994年日本批准)
「民族上、宗教上もしくは言語上の少数者、または先住民が存在する国においては、当該少数者または先住民に属する子どもは、自己の集団の
他の構成員とともに、自己の文化を享受し、自己の宗教を信仰しかつ実践し、または自己の言語を使用する権利を否定されない」(第30条)


毎日の報道に振り回されるよりも、とにかく最後まで身近なところで何かしたいと思います。のはすが、今日のビラ配りに寝過して行けなかったので、今日はせめてでもブログ更新…。甘いですね…すみません…。


さて、最後の記載されている教員らが呼びかけ人となり、「高校無償化制度」から朝鮮学校を除外しないよう求める大学教員の要請の賛同を募っているそうです。よろしければ、ゼミの先生、指導教授など、大学教員らに幅広く呼び掛けてくださいますよう、ご協力のほど、よろしくお願いいたします。

こちらで最新情報が更新されています。あっという間に賛同教員も増えました。メッセージのダイジェストなんかもご覧になれます。

「高校無償化」措置を朝鮮学校に適用することを求める大学教員の要請書
http://d.hatena.ne.jp/mskunv/

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(転送歓迎)

 「高校無償化」の就学支援対象から朝鮮学校を除外しないように求める大学教員の要請書を作成しました。

 要請書をお読みいただき、ご賛同いただけるようでしたら、3月15日(月)までに下記の要領にて、 メールでお送りください(事の緊急性に鑑み、期日までに届いた分を16日(火)には提出したいと考えています。短い期間ですがご了承ください)。

宛先: msk_univ@yahoogroups.jp

(↑@マークを半角にしてください)

お名前:

所属大学:

職位(任意):

メッセージ(任意):

*提出する署名にはお名前と所属大学のみを記します。職位(教授、准教授、非常勤講師等)はデータの客観性を担保するために念のために確認させていただくものです。不記入でもけっこうです。
すでにいくつものの声明が出されていますのが、今回の呼びかけは「大学教員として」という立場からのものです。この場合の「大学教員」は広く「大学の教育・研究に携わる者」として、常勤、非常勤、有期雇用などの区別を問わないこととします。もちろん国籍や居住地も問いません。

*メッセージをご記入いただいた場合、政府に提出するとともに、報道関係者に公開する可能性があることをご了解ください。不記入でもけっこうです。

*最新情報は下記ブログにて更新予定です。要請書のPDFファイルも下記からダウンロードできます。

 http://d.hatena.ne.jp/mskunv/

           2010年3月13日
内閣総理大臣 鳩山由紀夫
文部科学大臣 川端達夫
内閣官房長官 平野博文


「高校無償化」措置を朝鮮学校に適用することを求める大学教員の要請書


 「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律」案(以下、「高校無償化」法案)が国会で審議される状況の中、
鳩山内閣朝鮮学校高級部(以下、朝鮮高級学校)をその適用対象から除外する方針を固めたとの報道がなされています。私たちは、大学の教員として
教育・研究に携わる者の立場から、朝鮮高級学校のみを適用の対象外とすることに反対します。


 現在、少なからぬ朝鮮学校出身者が国・公・私立大学において学んでいます。私たちは、大学の「国際化」という観点から、朝鮮学校出身者を含めて、
多様な民族的・文化的バックグラウンドを持つ人びとが相互に対話できる空間を創造することこそが、大学人の責務と考えています。2月末には国連人
種差別撤廃委員会において朝鮮学校の除外は人権保護の観点から問題があるという見解が表明されましたが、「子どもの権利条約」(1994年日本批准)
において「民族上、宗教上もしくは言語上の少数者、または先住民が存在する国においては、当該少数者または先住民に属する子どもは、自己の集団の
他の構成員とともに、自己の文化を享受し、自己の宗教を信仰しかつ実践し、または自己の言語を使用する権利を否定されない」(第30条)と定めている
ことを思い起こす必要があります。私たちは、教育の理念は、「子どもの権利条約」や「人種差別撤廃条約」に示された普遍的な人権に基礎づけられね
ばならないと考えます。


 高校無償化の対象から朝鮮学校を除外するとすれば、すでに公立学校・私立学校にくらべて大きな経済的負担を強いられている朝鮮学校の関係者に、
さらに大きなハンディキャップを課すことになります。くわえて高校無償化の財源を特定扶養控除の圧縮によって確保することになれば、朝鮮学校生徒
の保護者にとってはむしろ負担増となります。個々人の出自や信条にかかわらず、多様なルートで高等教育にアクセスする機会が日本社会に在住するす
べての若者に等しく保障されねばならないと私たちは考えます。


 朝鮮高級学校の除外案が、「拉致」問題と朝鮮学校とを結びつける発想から出てきていることは明らかです。外交ルートで教育内容を確認できるかど
うかという基準は、朝鮮学校の排除という方針を別のことばで表現したものに過ぎません。また、政府が第三者評価組織を設け、朝鮮高級学校の教育内
容が「高校の課程に類する課程」であるかどうかを判断するとの報道もありますが、すでに多くの国立大学が高等学校専修課程の基準(修了に必要な総
単位時間数2590単位時間以上、普通教科の総単位時間数420単位時間以上)を準用して朝鮮学校の入学資格を認め、文科省もこれを認めてきた以上、こ
れはすでに解決済みの問題です。つまり今回の政府案は、外交上で解決されるべきことがらを教育問題に不当にすり替えるものに他なりません。


 のみならず、私たちは、朝鮮高級学校の排除が、今日の日本における排外主義的な風潮と軌を一にしていることを憂慮しています。近年、在日朝鮮人
に対して公然と差別的な言動を行なう動きが現れています。最近では、数名のグループが京都の朝鮮初級学校に押しかけて、「朝鮮学校を日本から叩き
出せ」などの罵詈雑言を浴びせる出来事が起こりました。朝鮮学校除外を主張する日本政府および政治家の姿勢は、そうした排外主義的・暴力的な行為
の裏付けにすらなりうるものであり、鳩山首相所信表明演説で述べた「友愛」の精神を自ら投げ棄てるに等しいものです。


 私たちは、鳩山由紀夫内閣総理大臣および川端達夫文部科学大臣平野博文内閣官房長官に対し、高校無償化制度について、朝鮮高級学校を含む全て
外国人学校を対象とする制度とするよう強く求めます。



呼びかけ人(3月13日現在、あいうえお順)

板垣竜太(同志社大学)、鵜飼哲一橋大学)、内海愛子早稲田大学)、駒込武(京都大学)、坂元ひろ子(一橋大学)、高橋哲哉東京大学)、外村大(東京大学)、冨山一郎(大阪大学)、仲尾宏(京都造形芸術大学)、中野敏男(東京外国語大学)、藤永壮(大阪産業大学)、三宅晶子(千葉大学)、水野直樹(京都大学)、米田俊彦(お茶の水女子大学


_____________________
(ここまで)




※追記

今回、よびかけ人に名を連ねている大学教育に知人も多かったので、積極的に転載させていただきました。この要請書の意義として、朝鮮学校出身の学生が多く在籍している大学の教員として、「高校無償化法案」から朝鮮学校を除外するという事態に対し、いかなる立場を表明するという姿勢が重要だと考えたからです。また、声を聞きとられやすい大学教員たちが集って、異議を申し立てすることの戦略性も高いのではないかと思いました。

しかし、大学教員という枠だけで署名を募ることに対する疑念を、id:toledさんがtwitterで以下のようにつぶやいています。

湾岸戦争のとき、柄谷とか浅田とか田中康夫とか中上とかが「文学者の声明」とかっていうのを出して、え、「文学者」って何様? そういうのが天皇制的メンタリティなんだよ! っていう批判がなされたのに、21世紀にもなってなにやってんでしょうね。
(toled,twitter,2010.03.14 21:49)

このつぶやきを見て、自分の中に権威主義が植えつけられていることを改めて気付かされました。追記冒頭で述べたことそのものが、この権威に依拠していたのだと思います。

「行動する知識人」たちに、私自身も研究者を志すものとして、深く敬意を表しますが、将来の私を含め、根本的な問題の解決のためにもできるだけ降りてきてほしい。もちろん、すでに持ってしまった権力との矛盾に葛藤を抱えている人もおられると思います。そういった揺れとともに立場を表明するべきなのかもしれません。

id:toledさんによる、この要請書と同じ文章で「ニート・フリーター・学生・低学歴者による声明」を作り、誰でも署名できるようにするという案に、私は賛同します。

*1:3月12日付「朝鮮学校の教育内容、第三者機関が検証へ 4月に設置」(朝日新聞http://www.asahi.com/politics/update/0312/TKY201003120215.html

*2:3月12日付「「総連と断絶を」朝鮮学校視察の橋下知事、府補助に条件」(朝日新聞http://www.asahi.com/politics/update/0312/TKY201003120415.html

「『高校無償化』からの朝鮮学校外しを許さない緊急集会」@大阪&京都


緊急のお知らせです!先日からお伝えしている、朝鮮学校の「高校無償化」除外に対する緊急集会が催されます!ぜひ、お近くの会場に足をお運び下さい!なお、たくさんの方に呼びかけていただけると幸いです。末尾に京都緊急集会のビラも添付しています。

詳細はこちらにもまとめています(アクション一覧も更新しました!)↓
「朝鮮学校の高校無償化除外に抗議しよう!」



以下、案内を編集して、転載いたします(※転載可)。


<大阪緊急集会>
◎名称:『高校無償化』からの朝鮮学校外しを許さない大阪緊急集会
◎日時:3月4日(木曜日) 午後6:00開場、6:30開始
◎場所:東成区民ホール(大阪市東成区大今里西2-8-4、06-6977-9734)
    アクセス⇒http://migohsha.com/db/g/a007/d00322.php
◎参加費:500円(資料代、政府要請団カンパ、要請ハガキ代)
◎主催:同実行委員会
    在日本朝鮮人大阪府民族教育対策委員会
    学校法人 大阪朝鮮学園
    大阪府下の各朝鮮学校を支える会
◎問合せ:同実行委員会事務局(大阪朝鮮高級学校内)
      072−963−4020(李)


<京都緊急集会>
◎名称:『高校無償化』からの朝鮮学校外しを許さない京都緊急集会
◎日時:3月5日(金曜日) 午後7:00開場、7:30開始
◎場所:ラボール京都(京都市中京区壬生仙念町30−2 / 075−801−5311)
    アクセス⇒ http://www.labor.or.jp/kaikan/access.html 
◎参加費:500円(資料代、文部科学省要請団カンパ)
◎主催:同実行委員会
    在日本朝鮮人京都府民族教育対策委員会
    学校法人 京都朝鮮学園
    朝鮮学校オモニ会京都府連絡会
◎問合せ:同実行委員会事務局 (075−313−6161) 



(参考1)
鳩山由紀夫内閣総理大臣殿                    
川端達夫文部科学大臣殿              2010年3月2日

   すべての高校生に授業料減免を実現することを求める要望書

このたび、あらたに政権をになわれた貴殿が民主党マニフェストにそって、高校生が安心して学べるために高校教育の無償化のための措置を講じようとされていることを心より歓迎いたします。 現下の厳しい日本の経済と社会のありようの中で、家庭の事情などのために高校進学を諦めたり、中途退学をよぎなくされたりする事態が各地おこっています。

したがって、教育の機会均等を保障するためにこのような措置をとられることは、時宜にかなったものと高く評価しております。

ところが新聞、テレビなどの報道によれば、朝鮮学校を対象から除外、という案が浮上し、総理大臣もそのような発言をなさいました。しかし、朝鮮学校は法制上も「各種学校」であり、カリキュラムは文部科学省の学習指導要領に準拠しながら使用言語のみが朝鮮語であるにすぎません。また行政や一般の日本人の見学も随時おこなわれ、その「公開性」はなんら問題とはなっていません。国交がないことと当該の学校の現実のありようは関係があるとはいえません。これはいわゆる台湾系の中華学校についても同様です。

また拉致問題があるので朝鮮学校を対象とはしないように、という中井担当大臣のご意見は、外交問題、政治問題と教育問題を短絡させたご発言であり、世界中ですべての子どもが教育を受ける権利がある、という国際人権規約の趣旨にも違反するものであります。

2月24日の報道によっても国連人種差別撤廃委員会では朝鮮学校を対象からはずすことは民族差別に当たるのではないかと指摘する意見が出ています。

したがって現在報道されているような方向で無償化の措置から朝鮮学校中華学校などが除外されることは、国際的視点からも、法の下の平等原則からいってもゆるされるべきではないと考えます。

ついては、表記の通り、朝鮮学校高校生などを除外することなく、マニフェスト通りの公約を実現されたく、強く要望するものです。


有馬頼底(臨済宗相国寺派管長
井口和起(京都府立大学名誉教授)
上田正昭京都大学名誉教授)        
鶴見俊輔(哲学者)
仲尾 宏(京都造形芸術大学客員教授)    
中塚 明(奈良女子大学名誉教授)
日高六郎(元京都精華大学教授)       
水谷幸正(仏教教育学園理事長)   
水野直樹(京都大学教授)          
宮城泰年(聖護院門跡門主)   
本山美彦(京都大学名誉教授)        
森 清範(清水寺貫主)      
山折哲雄国際日本文化研究センター名誉教授) 五十音順



(参考2)
朝鮮学校も高校無償化の対象に 府の地方議員20人が要望書」(3月1日付「京都新聞」)

政府が新年度から実施する高校授業料無償化の対象に朝鮮学校を含める是非を検討していることを受け、京都府内の超党派の地方議員20人でつくる「日朝友好京都ネット地方議員の会」(代表・角替豊府会議員)は1日までに、鳩山由紀夫首相や川端達夫文科相らに朝鮮学校を排除しないよう求める要望書を送付した。

要望書は、府内自治体が朝鮮学校に教材購入費の補助など財政支援を行っていることを指摘し、「教育保障や基本的な人権の問題」にかかわるとして、朝鮮学校を高校授業料無償化から排除しないよう強く求めている。

鳩山首相が「(北朝鮮と)国交がなく教科内容が見えない」と述べたことに対し、角替代表は「府や京都市補助金拠出にあたり、高校と同等の教育や学則があると確認している」と話している。

府文教課によると、日本の高校にあたる京都朝鮮中高級学校の高級部に通う生徒は府内に約120人いる。 




※↓京都緊急集会のチラシ。プリントアウトして配布してください!
チラシ『高校無償化』からの朝鮮学校外しを許さない京都緊急集会.pdf 直

<更新>朝鮮学校の高校無償化除外に抗議しよう!

2010年2月21日付の「共同通信」配信記事で、中井洽拉致問題担当大臣の要請を受け、川端達夫文部科学省大臣など政務三役が、4月から実施予定の高校無償化から朝鮮学校生徒を対象からはずす検討に入ったと報道された。2月25日から審議が始まっている。

その後、各紙でこの件に関する続報および社説が掲載された。以下、記事一覧。

・2月21日付「高校無償化、朝鮮学校除外を要請 中井拉致問題担当相」(47NEWS(/共同通信))
 http://www.47news.jp/CN/201002/CN2010022001000624.html

・2月23日付「朝鮮学校、無償化対象外に…国家公安委員長」(読売新聞) 
 http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20100223-OYT1T01060.htm

・2月23日付「【主張】朝鮮学校 無償化除外へ知恵を絞れ」(産経新聞
 http://sankei.jp.msn.com/life/education/100223/edc1002230302000-n1.htm

・2月23日付「高校無償化、外交は考慮せず=朝鮮学校の扱いで−川端文科相」(時事ドットコム
 http://www.jiji.com/jc/zc?key=%C4%AB%C1%AF%B3%D8%B9%BB&k=201002/2010022300303

・2月24日付「(社説)高校無償化―朝鮮学校除外はおかしい」(朝日新聞
 http://www.asahi.com/paper/editorial20100224.html

・2月25日付「首相、朝鮮学校の対象外を容認 高校授業料無償化で」(京都新聞
 http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P20100225000167&genre=W1&area=Z10


(※追加)
・2月26日付「(社説)高校無償化 「排除」は理念にそぐわぬ」(西日本新聞
 http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/154900#

・2月26日付「朝鮮学校の無償化「結論出てない」首相が修正」(読売新聞)
 http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20100226-OYT1T00480.htm

・2月26日付「「高校無償化」の差別なき適用を 日本の教育関係者が取り組み決議 」(朝鮮新報)
 http://www1.korea-np.co.jp/sinboj/j-2010/02/1002j0226-00002.htm

・2月26日付「「高校無償化除外は不当な民族差別」 衆議院議員会館で記者会見 」(朝鮮新報)
 http://www1.korea-np.co.jp/sinboj/j-2010/02/1002j0226-00001.htm

・2月27日付「【主張】高校無償化 朝鮮学校の説明は不十分」(産経新聞
 http://sankei.jp.msn.com/world/korea/100227/kor1002270252002-n1.htm#

・2月27日付「[高校無償化]朝鮮学校除外は筋違い」(沖縄タイムズ)
 http://www.okinawatimes.co.jp/article/2010-02-27_4002/#

・2月27日付「【特報】無償化除外?素顔の朝鮮学校」(東京新聞
 http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2010022702000056.html
 (→こちらのブログで、文字起こしされています!「vanacoralの日記」:http://d.hatena.ne.jp/vanacoral/20100228

・3月1日付「高校無償化除外は国連諸条約に違反 日本の各市民団体も強く抗議」(朝鮮新報)
 http://www1.korea-np.co.jp/sinboj/j-2010/02/1002j0301-00001.htm

・3月1日付「ジュネーブで対日審査会合 朝鮮学校「高校無償化」除外に懸念」(朝鮮新報)
 http://www1.korea-np.co.jp/sinboj/j-2010/02/1002j0301-00002.htm

・3月2日付「首相、朝鮮学校生徒との面会に意欲 高校無償化で」(産経新聞
 http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100302/plc1003021020006-n1.htm

・3月2日付「鶴見さんら、朝鮮学校も無償化を 首相と文科相に要望書」(47NEWS(/共同通信))
 http://www.47news.jp/CN/201003/CN2010030201000932.html

・3月2日付「高校無償化へ朝鮮学校の生徒が署名活動」(日刊スポーツ(/共同通信))
 http://www.nikkansports.com/general/news/f-gn-tp0-20100302-601890.html


今回の問題と「産経」および「朝日」の社説に関する批判に関しては、「日朝国交「正常化」と植民地支配責任」というブログが大変参考になる。

「産経」は、いつものごとく対「北朝鮮」悪イメージを煽っており、いかに「知恵を絞って」朝鮮学校を除外するかと言い切っているわけだが、それに対して「朝日」は、「朝鮮学校も変わった」のだから除外はおかしいという対抗軸を置いた。しかし、「朝日」も朝鮮学校の歴史的経緯を無視して、朝鮮学校にあたかも自己責任があるかのような論調である。以下のブログでも指摘されているように、これは日本社会に受容するかされないかという強迫と言っても過言ではない。

しかし、いわゆる「良心的日本人」の多くが、この「朝日」的な論説に賛同するのではないだろうか。「支援」対象である朝鮮学校に、黙らせていないか、ちゃんと向き合う必要がある。そういう意味でも、必読文章だ。

kscykscyさんのブログ「日朝国交「正常化」と植民地支配責任」

・2月17日付「『産経新聞』は何を「明らかに」したのか――朝鮮学校と高校「無償化」問題 」
 http://kscykscy.exblog.jp/12857819/

・2月23日付「「公的確認」の論理と教育「内容」の問題――朝鮮学校と高校「無償化」問題2」
 http://kscykscy.exblog.jp/12886916/

・2月24日付「案の定の『朝日新聞』社説――朝鮮学校と高校「無償化」問題3」
 http://kscykscy.exblog.jp/12894670/


(※追加)
・2月27日付「鳩山「国交」発言にみる狎れあいの構図――朝鮮学校と高校「無償化」問題4」
 http://kscykscy.exblog.jp/12907787/

・3月1日付「再び『産経新聞』を批判する――朝鮮学校と高校「無償化」問題5」
 http://kscykscy.exblog.jp/12920547/


また、このような報道を受けて、各地域の市民団体や個人が、政府に対する抗議行動を起している。京都でも「朝鮮学校を支える会京・滋」が、緊急で申し入れを行った。

2月22日付「朝鮮学校の無償化除外、撤回を 京滋の支援団体、政府に申し入れ」(京都新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100222-00000040-kyt-l26

東京の朝鮮学校関係者が、記者会見を行ったとの記事が、「月刊イオ」のブログで紹介されている。

・2月25日月刊イオブログ「差別なき無償化を! 保護者たちが記者会見」
 http://blog.goo.ne.jp/gekkan-io/e/226560530edbe9a2ec0f6dc5cb3091c1


私は、最初の一報を受けたとき、日本は在日朝鮮人を人質に取る気だと思った。かつての安倍政権期の「対北朝鮮政策」と全く同じ論理構成だったからだ。忘れもしない。2007年当時に、公安調査庁長官・漆間巌(当時)が、

北朝鮮朝鮮民主主義人民共和国)が困る事件の摘発が拉致問題を解決に近づける」
北朝鮮に日本と交渉する気にさせるのが警察の仕事」
「そのためには、資金源について『ここまでやられるのか』と相手が思うほど事件化するのが有効だ」

と発言し、実際に、その年、次々に朝鮮総連関連機関を激しく弾圧した。滋賀朝鮮初級学校も攻撃対象となり、子どもたちに深い傷が残った。

今回、問題の中井洽拉致問題担当大臣は、新内閣において国家公安委員長拉致問題担当大臣を兼任している。拉致議連副会長・民主党拉致問題対策本部長という経歴を持ち、「対北朝鮮政策の最強硬派」ということだそうだ。以下のブログが、この点について詳しい。

debuggerさんのブログ「media debugger」
2009年9月24日付「中井洽とは誰か――新政権人事に見る朝鮮人への弾圧強化政策」
http://mdebugger.blog88.fc2.com/blog-entry-18.html

上記のブログでも指摘しているように、こうした新政権の人事に対する正確な分析が甘かったと思う。私は、民主党にはなから期待していなかったが、正直これまでのような「革命的警戒心」は薄れていた…。政権交代を楽観視するのではなく、そこに引継がれている影響力の大きさや連続性を、しっかり見極めるべきだった。

このような「強硬派」路線が、まだまだ根深くある。最近、拉致被害者家族の蓮池透さんが、家族会の活動を総括するようになり、制裁ではなく対話を求める発言をしている。彼は、日本政府や支援団体である「救う会」の目的が、善意の裏にまず「北朝鮮打倒」というところにあり、本気で被害者のことを考えているように思えないと不信感を露にしてる*1。日本政府は、「北朝鮮打倒」という強い目的のために、拉致被害者と家族を利用しているに過ぎない。今回もそのように捉えてよいだろう。


さて、そもそも「高校無償化法案」の趣旨とは、国際人権規約Aに定められている理念を具体化したものであり、その内容は誰もが後期中等教育を保障しようというものであるようだ。

「種々の形態の中等教育は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、一般的に利用可能であり、かつ、すべての者に対して機会が与えられるものとすること」(国際人権規約A規約第13条の2(b))

外交関係が云々、教育内容が云々で除外するようであれば、当初のこのような趣旨からも相反することになる。先述したような外交戦略を介入させる意図は、文科省も否定しているようだが、ただ、外国人学校の中でもとりわけ朝鮮学校に限定するのであれば、これはもう差別の何者でもない。

朝鮮学校は「各種学校」として認可されているが、「一条校」と同等の教育課程を有しており、過去の運動で、JRの通学定期問題や大学受験資格問題でも権利を勝ち取ってきた。インターハイなどにも出場するようにもなってきた。教育内容が確認しにくいと言われているが、「各種学校」として定められている以上、各自治体に報告はしなければならない。さらに、地域の日本の公立学校との交流や、公開授業や行事を開催して地域の人との交流を図ってもいる。

日本の植民地支配責任・戦後補償の一環として、民族教育の権利を保障しなければならないというのがことの本質であるにもかかわらず、朝鮮学校にここまでの努力をさせてこれ以上何を求めるのか?


このブログ記事を書くために、情報をまとめていると、先に記した2月25日付の最新記事で、鳩山首相朝鮮学校除外を容認していることが分った。消極的にだが、対象に含めるとの余地も残しているあたりが、内部でも揺れているのだろうか、まだ分からないので、今まさに行動するときである。個人でもできることがたくさんあるので、賛同くださる方がおられれば、ぜひご協力を!!

詳しくは、以下のサイトでも紹介しています!

サロン吉田山
http://www5d.biglobe.ne.jp/~tosikenn
民族学校を考える
http://www5d.biglobe.ne.jp/~mingakko


◆今すぐできるアクション一覧◆

1.ライブドアリサーチであなたの意見を反映させよう!
「高校無償化から朝鮮学校をはずすべき?」
ライブドア世論を判断するサイトがある。高校無償化の朝鮮学校除外に賛成か反対か、私たちの声を反映させることができます!ぜひワンクリックを!
http://research.news.livedoor.com/r/40856



2.中井洽事務所 に抗議の声を届けよう!
 東京都千代田区永田町2-2-1 衆議院第一議員会館533号室
 TEL:03-3508-7263 FAX:03-3592-9044
 意見提出サイトhttps://ssl.nakai-hiroshi.net/contact



3.首相官邸文科省に抗議の声を届けよう!
首相官邸 ご意見募集
http://www.kantei.go.jp/jp/iken.html

文部科学省に関するメールでの御意見・お問い合わせ窓口案内
http://www.mext.go.jp/mail/
↑このページの下の方に、「高等学校の実質無償化に関すること」という項目がありますのでここから。
文部科学省ホームページトップのご意見伺います をクリックし
高等学校の実質無償化に関すること をクリック
首相官邸ホームページトップ をクリック


※(追加)携帯サイトからもできます!
 http://www.kantei.go.jp



4.地方の国会議員に抗議の声を届けよう!
<滋賀の国会議員室 FAX 番号>
川端達夫  03−3502−5813
田島一成  03−3508−3898
三日月大造 03−3508―3899
奥村展三  03−3508−3945
林久美子  03−5512−2639
徳永久志  03−5512−2619


<京都の国会議員室 FAX 番号>
平 智之  03−3508−8814
前原誠司  03−3592−6696
泉 健太  03−3508−3805
北神圭朗  03−3508−3268
谷垣禎一  03−3597−0895
山井和則  03−3508−8882
小原 舞  03−3508−3804
豊田潤太郎 03−3508−3818
伊吹文明  03−3502−5382
池坊保子  03−3508−3870
竹内 譲  03−3508−3353
穀田恵二  03−3508−3918
福山哲郎  03−5512−2614
二之湯智  03−5512−2632
松井孝二  03−5512−2613
西田昌司  03−3502−2897
井上哲二  03−5512−2710

※他地域は、自分で調べてね!


(※追加)
5.「高校無償化」制度の朝鮮学校( 高級部)への適用を求める要請書 」賛同よびかけ

***以下、転載***

高校無償化の朝鮮高校排除の動きに対し、以下の要請書を政府に提出するよう運動が行われています。
ぜひ賛同してください。
賛同は、個人でも団体でもかまいません。賛同の方は、3月3日
午前7時までに、
koshida@jca.apc.org
あるいは、FAX: 011-596-3683
まで返信してください。
また、知り合いの方にも知らせてください。



「高校無償化」制度の朝鮮学校( 高級部)への適用を求める要請書

2010年3月3日

内閣総理大臣 鳩山由紀夫

文部科学大臣 川端達夫



鳩山首相が、衆議院で審議されている高校無償化法案に関連して、在日朝鮮人の通う朝鮮学校を無償化の対象から外す方向で調整していることを明らかにし、その理由を「朝鮮学校がどういうことを教えているのか指導内容が必ずしも見えない」と述べたという記事(北海道新聞、2010年2月26日)を、私たちは読みました。

私たち、教育問題や国際協力、差別問題などに関心をもつ市民は、この発言に驚いています。私たちは鳩山首相に対して朝鮮学校も高校無償化の対象に含めるよう再考することを強く求めます。また川端文科相に対して、朝鮮学校を対象にしていた方針を変更することなく進めることを要請します。

朝鮮学校だけを、無償化の対象から外すことに合理的な根拠はありません。朝鮮学校は、各都道府県が各種学校として認定し、公立・私立大学の半数以上が独自の判断で受験資格を認めてきた学校です。国立大学で初めて受験資格を認めた京都大学は、朝鮮学校の授業や教科書を検討し「高校」と差がないことを確認しています(朝日新聞、2002年9月13日)。

この事実をみれば、朝鮮学校が「日本の高校に類する教育課程」をもつ学校を対象とするという文部省の方針に合致していることは明らかです。また「教育の機会均等」や「教育の国際化」という文部科学省の方針からしても、朝鮮学校だけを排除することはできないはずです。

朝鮮学校を学校教育基本法第1条の学校として認可しないというこれまでの文部科学省の方針に対しては、日本政府が批准(または加入)している国際人権諸条約の委員会から、これを民族差別とする「懸念と勧告」が何度も出されています。とくに社会権規約委員会は「朝鮮学校のようなマイノリティの学校がたとえ国の教育カリキュラムを遵守している場合でも正式に認可されておらず、したがって中央政府補助金を受け取ることも、大学入学試験の受験資格を与えることもできない事について、懸念する」(2001年8月31日)と強い勧告を出しています。

もし、高校無償化から朝鮮学校をはずすことになれば、これまでの差別をさらに広げることにつながります。それは「友愛」を掲げる鳩山政権の本意に反することではないでしょうか。

私たちは、朝鮮学校を高校無償化から除外しないことを求めます。


呼びかけ人 林 炳澤、黒田秀之、越田清和、小林久公、高橋 一、高橋芳恵、七尾寿子、花崎皋平、秀嶋ゆかり、細谷洋子、堀口 晃、三澤恵子、宮内泰介、山口たか



6.各新聞社への世論喚起
朝日新聞社
〒104−8661 京橋郵便局私書箱300号、朝日新聞社「声」係
<FAX>0570‐013579
<e-mail>tokyo-koe@asahi.com


・読売新聞
〒103-8601 郵便(株)日本橋支店留、読売新聞東京本社「気流係」
<FAX>03-3217-8229
<e-mail>tousho@yomiuri.com


毎日新聞
ネットフォームからの投稿になります。
https://form.mainichi.co.jp/annuncio/hiroba/


東京新聞
ネットフォームからの投稿になります。
https://cgi2.chunichi.co.jp/tko/hatsugen/form.shtml


※すっごく急いで書いたので、散文で読みにくいことをご容赦ください。。

*1:

拉致対論

拉致対論

私は「レイシスト」です―「朝鮮人を見下すな」さんのコメントへの応答

京都朝鮮学校第一初級学校へ「在特会」が押し寄せてきた件についての「私の「怒り」とは?」というエントリーへ、2009年12月22日にいただいた「朝鮮人を見下す」さんのコメントについてレスポンスできずに、現在にまで至っておりました。申し訳ありません。ブログに記事を書き、コメントをいただいた以上、私には応答責任があります。しかし、正直なところを申しますと、それらの問いかけに向き合う準備ができていませんでした。冷静にお応えできるか分かりませんでした。その気力に欠けていたとも思います。

スルーという手段もあったかもしれません。精神的にきつくて、そのように対応しようと思った時期もありました。しかし、投げかけられた言葉に、受け止めなければならない批判もありました。これだけの時間が経過してしまって申し訳なく思いますが、少し時間も経ち、客観的にとは言わないまでも、対話のテーブルにつくための前段階としてのお話ができるかなと思います。

朝鮮人を見下すな」さんのコメントは、かなり多義に渡っており、論点を整理することがやや難しかったもので、文章を追って見ていきたいと思います。


1.自分自身のアイデンティティの為に朝鮮人を利用していることについて

そもそも自分は被害者根性でいながら判り合いましょうと言うのが無理な話ですよ。貴方も京都に多いとされる左翼と同様なだけじゃないですか?自身のアイデンティティの為に朝鮮人を利用するな。


文脈からして、被害者根性であるのは、私ですよね。「被害者根性」=「京都左翼」というイメージが、私にとって新しい発想でした。私もどちらかと言えば「左翼」でしょうし、「左翼」のレッテルをいつでも引き受けます。「左翼」にも「京都左翼」にもいろいろいると思うのですが、ただ確かにご指摘の通り、自身のアイデンティティの為に被害者を利用する運動というのは、少なからず存在すると思います。どのあたりでそう思われたのか具体的に聞いてみたいところですが、どちらにしろこれは真正面から受け止めるべき批判でしょう。

おそらく多くの「左翼」が、このような批判を正直に認め受け止めることができなかったことこそ、運動の後退につながっていったと思います。断定はできませんが、現在もそういう体質はあるのではないでしょうか。

自分自身の経験、在日朝鮮人との出会いから運動に携わるまでの葛藤を思い返してみました。加害者としての「日本人」を、突き付けられた時のなんとも言えない喪失感。私は、それまで「日本人」であることを意識して生活してこなかったし、できてきたわけなので、言われもない罪を被せられた感覚に等しかったです。しかし、そう振る舞える立場こそ「加害者」なのだ、と思うようになり、自分なりの行動に出ていくことになります。

最初、自分が、「日本人」であることを本当に嫌悪しました。他者を踏みつける「日本人」であることから、逃げたかった。「朝鮮人」になりたいとまで思いました。しかし、それも在日朝鮮人学生の運動に出会ったとき、簡単に崩れていきました。紛れもなく「日本」という国家の成員として責任を付与されているわけだから、ナショナリズムではない形で、「日本人」という主体を立ち上げ、彼/彼女らの声に応えていく必要があると。

このような「日本人」という責任主体を立ち上げるまでの過程は、まさに在日朝鮮人を利用していたと言わざるを得ないでしょう。私の中の「日本人」を否定しようとし、そして同時に責任を果たそうとする姿勢は、評価されましたし求められてきました。もちろん、厳しい批判にも晒されたともあるし、不十分極まりないものではありましたが。しかし、こうして私は、在日朝鮮人の仲間たちに、癒されてきてしまったのです。彼・彼女たちが声を発さなければ、そうやって当事者が常に身を削ってこなければ、私は何の主体も持ち得なかったのです。それは本当に情けないことです。


2.学校の状況について

教職者のくせに校庭のある学校も用意しないで都合のいい時だけ甘えておいてルールは無視ですか?ルールが無くなったら秩序なんて無いんですよ。貴方が言うような過去の責任はルールがあってこそです。学校側は生徒が怯えたとか言う前にそれを防ぐべく行動を起こしたんですか?被害者ずらだけして自分に責任は無いとでも?学校側は親に伝えていなかったのか?知っていたなら親はそんな事態を見過ごして子供を学校に送ったのか?危機管理能力が低すぎます。学校の思惑が見え見えですよ。
財政力と言いますが、グラウンドも借りれない組織が民族繁栄の為に学校を作ろうと言うのが独善的で子供のことなんて考えてないじゃないですか。東京の一等地の未払いで問題になった朝鮮学校だってそうでしょ。本当に子供のことを考えるなら朝鮮学校を統合でもして郊外かもっと外の安い土地でやり繰りすればいいんですよ。子供の為を思うと言うのはそういうことです。(もっと言えばナショナリズムを高揚させる為に作る民族学校なんていりません、ウルトラナショナリズムは友好(笑)の邪魔でしょ?)努力もせずに過去の歴史を穿り返して日本が悪い、何とかしろで済まそうとする根性とそれを支える自称人権派の日本人のせいで今にいたっているんじゃないですか?親玉の総連には朝鮮の国会議員がいるんだから民主主義の国らしく御国から在日にもっと資金を流してもらえば良いじゃないですか。


この点に関しては、問いかける主体が入り混じっているので、どうお応えすればいいか迷うところです。まず、学校の状況から言えば、京都朝鮮第一初級学校の形成史と公園使用をめぐる背景を、私が詳細に記述していなかったので、誤解を招いてしまったと思います。公園使用のルールに関しては、すでに数十年も前から、地域の人たちとの話し合いで定められていましたし、行政も認めているところです。なぜ校庭のない校舎になったのか、という具体的なやり取りまでは分かりませんが、解放後から現在に至るまで、学校・保護者・地域同胞が力を合わせて、自分たちの手で学校を支えてこられています。僅かな資金の中で、校舎がなくても民族教育をという思いでやってきただろうと、想像に難くありません。

さらに、「在特会」が日時を指定せずに、忠告だけを言い残しました。いつやってくるか分からない中で、学校関係者は、警備の強化などを要請するなど対策を練っていました。二度目の襲撃でも、子どもに二度とあんな思いをさせたくないという保護者や学校関係者の緊張を、胸がつまる思いで感じてきました。

このような被害を受けて、保護者の方々の思いもそれぞれだと思います。こういうことが起きて、学校に通わせるのは当然不安でしょう。でも、それに屈せずに、通わせるんだという強い意志を持つ保護者もいらっしゃいます。そのような保護者の姿に、私たちの姿勢が問われる思いがしました。

話は少しズレますが、「子どもために」というのは、一体何なのか…ということはあるかもしれません。「子どものために」と言いながら、実際は大人の都合で決めている、ということが常です。だから、そのように批判されることも分からなくもないですが、校庭が必要だということも大人が前提とした言説だなと思うのです。実際、校庭がなくても、本当に楽しく学校生活を送る子どもたちがいます。それは、校庭が必要ないということを言いたいわけじゃなく、子どもたちの主体を尊重することが大事だということです。

「自称人権派の日本人のせいで」というくだりに関しては、相変わらず何も変えられていないという点で、「自称人権派の日本人」の責任は大きいと思います。もっともっと何か出来たのではないかと悔いるばかりです…。

ちなみに、「学校の思惑」というものが、何を想定されているのか、よく分かりませんでした。


3.日本の学校に在籍する在日朝鮮人と植民地支配責任とナショナリズム

私の友達に「元」在日朝鮮人がいますが民族学校より公立学校に来ておいて良かったと言っています。かと言って改名もしていませんし彼が民族的朝鮮人であることに変わりありませんし、彼の家に行ってもそれを感じます。どうせ日本人の中に入ったらイジメられるから無理と言うのでしょうが、イジメは朝鮮人じゃなくてもあるでしょ。というより私の友人は仲良くやってましたよ、適応出来ないとか決め付けるのは日本社会への差別と朝鮮ナショナリズムのエゴですよ。第一、過去といっても60年も前ですよ?既に3〜4世代目に入っているのに何時までも甘やかして何が共存ですか?国に認められていない学校で学んで就職が厳しいとか、単に民族団結の誇りとやらのナショナリズムで負の連鎖を続けているだけじゃないですか。日本のナショナリズムは駄目なのに朝鮮ならいいんですか?努力している朝鮮人だっているのに一部朝鮮人と自称人権派の日本人せいで彼ら家族まで同類扱いされるんですよ。


今や在日朝鮮人も多様化していますし、さまざまな生き方をされていると思います。民族学校の必要性を強調すればするほど、すでに日本の学校に在籍している在日朝鮮人、ダブルの子どもなどが追いやられかねないと思います。1970年代までの運動が、まさにそうでした。日本の学校に在籍している在日朝鮮人は、民族学校に行くように促してきました。しかし、実際は、日本の学校に行かざるを得ない状況もあるし、目の前の生徒と向き合わないのかという批判が出るようになりました。結局、排他的な日本の本質は変わっていなかったと言えます。そういう意味では、民族運動に接するとき、そのあたりの問題をちゃんと視野に入れておかなければと思います。

ただ、今度は、包摂という問題をどう考えるのかと揺れ動きます。そこで、始まったのが日本の学校での民族学級の取り組みであったり、日本人教師たちの歴史教育や民族名運動です。これにもいろいろと考えるところがありますが、それらの運動の成果も一定の評価はされるべきです。日本の学校では、ルーツである朝鮮に触れる機会なんてほとんどないというだけでなく、「日本人」だけを育てる国民教育/同化教育にさせないためにも、朝鮮語、朝鮮文化、朝鮮史を学ぶ機会があることは在日朝鮮人だけでなく日本人にも必要なことだと思います。

さらに言えば、私は、60年前のことを「過去」として切り捨ててしまってはいけないと思っています。「過去」であるどころか、歴然と植民地支配は継続していると感じています。排外主義的な構造は存在していますし、物理的な差別は繰り返し起こっています。民族団結を強いているのは、日本社会の状況に規定されているからではないでしょうか。そこを見誤ってはいけないと思います。抵抗は、抵抗する相手がいるから抵抗するのです。「過去」としてしまうことで、未だ果たされていない植民地支配責任を曖昧にしてしまってはいけないと思います。

そして、60年経っても、民族的なものに触れて感動する在日の若者がいるということも事実です。その事実が、変わらない日本社会の状況を物語っていると思います。日常生活も生きにくさが、常に孕んでいることを思い知らされます。しかし、ご指摘のように、「努力している朝鮮人」のことを矮小化するということではありません。確かに、在日朝鮮人をいつでも従属的な主体としてみることは、差別的であると思います。生きにくい状況の中で、主体的に逞しく生きようとしている在日朝鮮人の姿もみなくてはなりません。ただ、当事者が努力してようがしまいが、私自身の責任は揺るぎません。

「日本のナショナリズムは駄目なのに朝鮮ならいいんですか?」という点に関しては、正直難しい質問ではあります。今の私のポジションからは、「イエス」としか答えるしかないと思います。ナショナリズムは、断固拒否する気持ちでいますが、そのナショナリズムの在り方が果たして対等足り得ているのだろうかと思うのです。つまり、ナショナリズムを生み出した文脈が全く違うからです。日本のナショナリズムの抵抗としてのナショナリズムを、自分のことを棚に上げて批判できるのでしょうか。だから、まず私は日本のナショナリズムを徹底的に批判します。逆説的に言えば、朝鮮ナショナリズムを批判して、自分たちの責任を免除するようなことはしたくありません。


4.私は「レイシスト

ちなみに私は過去日本が悪くないとは言いませんし、在特会を支持する気なんてありません。勝手に怒って挙句の果てには在特会ではなく我々日本を侮蔑したレイシスト朝鮮右翼の勘違い共と日本でも何でも分断しといてください。私は差別ばかりする両者に怒りを覚えます。そして彼らのナショナリズを都合よく解釈する貴方にも怒りを感じます。
まぁ私の意見をどう思うか知れませんが、少なくとも私は貴方方より対等な「対等な!」友好関係ではなく友人関係を朝鮮人と築けています。kiimikiさんは優越感に浸って努力してきた私の友人達を見下しているんですよ、ふざけるなレイシスト、以上。


ちょうどコメントくださった記事のタイトルが、「私の「怒り」とは?」でした。私は自分自身の「怒り」について、ちゃんと向き合わなければと思い、あの記事を書きました。「在特会」とは違うんだということを表明するために、「怒る」私。それはただの責任回避に過ぎないのであったと実感しました。

朝鮮人を見下すな」さん、あなたの「怒り」も、何のためですか?

そして、認めます。私は、「レイシスト」です。自分は、差別をしている、差別をするかもしれない、というところから出発しなければならないと思っています。決して「差別をしていない」とは言えない。そういう社会にいることを自覚しなければならないと。

性的欲望の向う先

前回は、「腐女子」デビューということで、同人誌即売会体験記を書いた。そこでは、BL・やおい市場の巨大さを目の当たりにした。私も最近になってやっと作品に触れるようになったが、そこまでの情熱は注ごうとは思えない。圧倒的なBL・やおい市場下において、漫画好きのはずの私が、なぜこんなにもはまらないのだろう…という疑問がますます強くなってきた。

昔は、BL・やおい作品は、セクシュアルな描写が含むので、堂々と読むものではないという認識を持っていた。いつか母親と本屋に行って、同人誌コーナーに母親が興味ありげに近づいていくと、「ダメ!」と止めた記憶がある。しかし、これは、あらゆる種類の二次創作作品とごっちゃにしていたような気もする(幼児虐待とか)。だから、かなりBL・やおいを歪曲して認識していた可能性があるし、内容を正確に理解していたわけではないだろう。BL・やおいは、私にとって、驚くほど遠い存在だったのである。

ちゃんと出会い直したのは、ほんの2年ほど前だ。小松原織香さんの「「レイプされたい」という性的ファンタジーについて」*1という記事がきっかけだった。タイトルだけでも、興味をひきつけられるものだったが、私としては、「え?みんな読んでたの?」という衝撃が先行した。身近にいる女性たちの中にも、愛読者が意外にたくさんいることも分かった。

小松原は、そういった作品を愛好してきた自分を、「思春期の気の迷い」としながら、だからこそなぜ愛好したのかを分析している。成長すると男性と交際し、次第にBL・やおいに興味を失っていく、ヘテロセクシュアルであるセクシュアルマジョリティにとっての「ヤオイ」について明らかにしようとした。

BL・やおい作品において、<攻>が<受>をレイプするという典型的なストーリーを、女性たちは需要してきた。小松原は、そうした現象に対して、以下のように仮説を立てる。

女性の抑圧された欲望がレイプという形で表現されているのではなく、レイプ・ファンタジーこそを女性は欲望しているのではないか。

実際のレイプでは、被害者は加害者に主体性を奪われ、<私>は殺されてしまうだろう。しかし、レイプ・ファンタジーでは、<攻>が、<受>の<本当の私>を引きずり出してくれるという。このようなレイプは、ファンタジーであって、実際には自分の身に起きないという安心感の中で、レイプ・ファンタジーを楽しむことができるのだと。また一方で、女性として「愛される」という技術を備えていることへの戸惑いを、「女」という部分を消すことで、対抗しようする。だから、BL・やおいに描かれる<受>は、女性的な男性つまり「非女」的なのである。こうして、

レイプ・ファンタジーによって、「この私」の「女」性を否定した向こう側に、<本当の私>を見出そうとした。

私は、BL・やおいという方向性に至らなかっただけで、以上のような分析にある、自分の「女」の部分の否定や<本当の私>を求めていた思春期に共感するところがあった。

そこで、BL・やおい作品に興味を持ったというより、それらに興味を持つ女性たちが気になるので、薦められたものは読むようにした。その中でも、よしながふみは、私のツボに上手くはまってくれた。『きのう、何食べた?』*2は、BLって感じが全然しないし、ゲイのリアリティに迫っていて、本当に面白い。ついつい街中で読んでいて噴き出してしまったこともある。

全然BLではないが、同じよしながふみの『フラワーオブライフ*3も傑作だ。前回の記事にも書いたのだが、1巻でオタクの真島というキャラが、「男らしい」男性同士のBL漫画を描いてきた同級生に説教するシーンで、以下のようなセリフを言っている。

ボーイズラブ好きの女どもは男同士の関係の潜在的な対等性に無意識に萌えてるんだ!受はあくまでももともとは受も攻も選べる男でありながらあえて受を選択しているのであってそもそも体の構造的に受動的な女とは根本的に違う!/読者は基本的に受に感情移入するものなんだ!

思わず「なるほど!そういう見方もあるのか!」と納得した。実際、よしながは、後に出した対談集『あのひととここだけのおしゃべり』*4の中で、女性たちは、「男同士の“相棒”関係への憧れ」があるのではとも言っている。

しかし、女性が<受>に感情移入するという点に関して、よしながは、対談集の中で、自分は<攻>に感情移入していると述べている。

BLの楽しみの一つって、少女マンガでは味わえない、男の人に対して自分がタチになれる楽しさ。…編集者さんたちは、女の子は<受>に感情移入しているとおっしゃるんですけれど…一瞬私間違ってたって反省してたんですが、でもやっぱりそうとも限らないって思えて。(p.78-79)

自由に<受>/<攻>に感情移入できるBL・やおいのさまざまな楽しみ方がある。女性たちの性的欲望が、少しでも解放的になれる世界なのではないだろうか。さらに、よしながは、以下のように考えている。

男の人が「どうせもてない女の慰めなんでしょ」っていいますよね。でも私、それも間違っていないと思う。…BLが、今の男女のあり方に無意識的でも居心地の悪さを感じている人が読むものであるっていうことだと思う。(p.82)

だから、無意識にでもフェミニズムに繋がっている、関係なくない、と。

ただし、男性同士の恋愛が、女性たちに消費されるようになると、ゲイ男性からの批判も出てきたようだ。上述したような女性たちの置かれた状況を前提とした、女性たちの性的ファンタジーなのだと主張しても、実際にホモフォビア的な作品もある中では厳しい。女性たちは、リアルなゲイは求めていないようだ。しかし、羅川真理茂の『ニューヨーク・ニューヨーク*5のような作品もあるので、性的マイノリティに自覚的な作家が増えてほしいなと思う。

さて、冒頭の問いに戻って、では私の欲望は一体どこに向かっているのかということ。これだけBL・やおいの楽しみ方を知ったところで、「へー」と思うだけで、自分自身の性的欲望にしっくりと当てはまるものではないようだ。漫画を描かれているあるレズビアンの方に、私が「BLに全然萌えないんですよ〜」と言うと、「わかるわかる。私たちの時代には、BLくらいしか読むものがなかったからね」とおっしゃっていたことが、とても印象的だった。作家が意図しないところで、実はクィアとしっかりと繋がっていたのだと思った。今、私がBL・やおいを読む楽しみも、そこにあるような気がする。

私が「オカズ」にしていたものは、やはり男性向けのエロ漫画だった。TLやレディコミも読むけれど、何か物足りない。恥ずかしくて絶対にそんなこと言えなかったが。もちろん、すべてを受け入れていたわけではない。どんな関係性でも、どんなシチュエーションでも、男性の欲望が意識されたものになっているので、本当に疲れる。見たくないところは、飛ばす。感情移入は、自分でも混乱するくらい、どっちにも。その中で登場する女性同士の絡みにも共感はできず…。こんな大変な思いして、エロ漫画を読まなくてはならないのだろうか…みんなどうしているんだろう…と思っていたが、BL・やおいを読んでたのね、って納得。今の今まで、そんな話をガールズトークでさえしてこなかったことにも、衝撃…。

今の私は、すっかりGL・百合にはまっている。ジャンルが確立しているわけではないので、なかなか良い作品に出会うのは難しいが。GL・百合にもっと早く出会っていれば良かったと思う、今日この頃。出会えていない女性も多いんじゃないか。女性の性的欲望の自由を掲げるのなら、やっぱりGL・百合も欠かせないでしょー。

戦前は、「エス」小説と呼ばれるものが、「少女雑誌」で流行していたそうだ。「エス」とはシスターの略語のようだが、女学校における女性同士の親密な関係を描いた少女小説である。百合との連続性はありそうだが、百合ほど踏み込んだ関係までには発展しない。その時代には、いくら親密になっても、強制的に結婚させられるのだから、そこまで問題視されることがなかったのかもしれないが、戦後、男女共学に変容する過程で、「少女雑誌」の内容も男女交際へと移行していくこととなる。

この異性愛主義が刷り込まれるプロセスは、私がGL・百合作品を必死で探して疲弊しているときの肩身の狭さと何か似ている…。

*1:小松原織香「「レイプされたい」という性的ファンタジーについて」『フリーターズフリー』2号、人文書院、2008年12月。

フリーターズフリー vol.2 (2)

フリーターズフリー vol.2 (2)

*2:

きのう何食べた?(1) (モーニング KC)

きのう何食べた?(1) (モーニング KC)

*3:

フラワー・オブ・ライフ (1) (ウィングス・コミックス)

フラワー・オブ・ライフ (1) (ウィングス・コミックス)

*4:

よしながふみ対談集 あのひととここだけのおしゃべり

よしながふみ対談集 あのひととここだけのおしゃべり

*5:

ニューヨーク・ニューヨーク (1) (白泉社文庫)

ニューヨーク・ニューヨーク (1) (白泉社文庫)

「腐女子」デビュー

課題に追われて、いろいろとやりたいことを自制していた、ここ最近。何をしなければならなかったけ?、何をしたかったけ?とリストアップしてみた。とりあえず、このブログに新しい記事を投稿することが、一番にしたいことだった。悶々としていたことを吐き出したかったんだ。

少し前に下書きしておいた文章が、知らない間に消えていた(削除された?)ので、ショックが大きい…。あのときの書き綴った思いはもう戻ってこないのね…。

それで、何を書いていたのかっていうと…「腐女子」について語りたかったのだ(苦笑)。


年明けに、ついに「腐女子」デビューした。つまり、いわゆる同人誌即売会(イベント)というものに参加してきたのである。「オタク」と名のるには、知識があまりにも浅はか。「腐女子」と名のるには、BLをあまりにも読んでいない。漫画は好きだけど、極めている方々の前では、恐縮すぎる。だから、イベント行ったくらいで、「腐女子」を名のるなと言われそうだけど、この歳になって一応デビューしたのである。この世界に片足突っ込み始めたのだ。

イベントに参加するために、事前にいろいろとアドバイスを受けた。なるべく早く入場できるように、開館時間の1時間以上前には、会場に到着しておくこと。待ち時間は長いので、十分に暖かくしておくこと。よしながふみの『フラワーオブライフ*1は、読んでいて良かった。オタクである真島というキャラが、イベントについて解説しており、事前にサークルの配置はチェックしておくことなどは常識だそうだ。しかし、どんなサクールがあるかなどは、あいにく分からないし、調べてこなかった…不覚であった。しかも、紙袋を忘れていた。友人やその他参加者は、購入したものと上着を入れるために、ガラガラを持ってきていた。勉強になりました。

会場に向かう電車の中は、電車が止まるんじゃないかと思うほど、ぎゅうぎゅう詰め。乗客のほぼ全員が、イベントを目的としている女子たちばかり。最寄り駅に到着すると、どこを見渡しても女子、女子。これだけの女子が、この会場一箇所に集まっているんだと思うと、嬉しくなった。これだけの人びとが集まれば、革命が起こせると興奮した。どこかに公安がいないか確認したほどだ。たまに紛れている男子も、その日の私はかなり温かな目眼差しを注いでいただろう。

私の目当ては、GL・百合作品。入場時にもらうサークル目録に必死で目を通すが、それらしきサークルが本当に少ない。おそらく8割が、BL・やおい作品である。このBL・やおい市場の巨大さに驚愕。志村貴子の『青い花*2が大ヒットしていても、まだまだGL・百合は、市民権が得られていないということだろう。とりあえず、創作作品を中心に漁ってみることにした。

創作作品のコーナーでは、素敵なイラストや雑貨が並んでいて、見て回るだけでも楽しくなる。皆さん絵が上手い!だけど、お目当てのストーリーものは少なく、ほとんどがイラストだったのが残念…。二次創作のほうも回ってみると、やはりBLで占められていたが、ファイナルファンタジーの女子キャラだけの二次創作などもあって、少し目が覚めた。内容的には、GL・百合要素が薄いけども、出会ったことが嬉しくて衝動買い。そこのサークルの方が、隣の人と「最近ノンケの友だちが減ってさ〜」と会話していて、おお当事者だったのねと二倍嬉しい。

ところで、注意書きとして「これは百合作品ではないので、ご安心ください」と書かれていた作品もあって、残念だった。いや、これ「ホモフォビア」でしょ?また、「外国人参政権反対」署名が設置されていたサークルもあったのも残念。いろんな人が集まるところではあるけれど、好きなものを通して共有し合おうとする同人イベントで、偏見が存在することは悲しくもある…。

まあ、そういう意味でも、GL・百合は、まだまだジャンルが確立していない。イベント自体が、青年ものと分けているような話も聞いたので、もしかしたら内容をBL・やおいに集中させていたかもしれない。青年ものに行けば、たくさん存在する可能性もある。男性向けなのだろうが。東京のイベントでは、GLオンリーのイベントもあるらしい。さすが、東京。ぜひとも行ってみたい。つまり、少女たちも読めるGL・百合は、全国規模で普及しているわけではないのね。それでも、GL・百合漫画は増えつつあるし、一昔前までなかった雑誌も発行されてきている。百合アンソロジーの『つぼみ』*3とかは、そこそこの評価のようだ。『青い花』を生みだした『エロティクスエフ』*4なんかは、GL・百合ばかりじゃないけど「クィアラブ」を広めようとしているとか。

これからのGL・百合を開拓するためにも、がんばらねば!(何を?笑)と逆にモチベーションが上がった1日であった。そして、私もちょっとくらいBL・やおいを読もうと思ったのであった。


miyakichiさんという方が、GL・百合漫画のレビューを書かれているので、私もこれを参考にしながら読みまくる!
「みやきち日記」http://d.hatena.ne.jp/miyakichi/

私も少しずつレビュー書いていこうかなー♪


今回は、ただのイベント体験記になってしまったが、次回は、なぜ女子たちはBL・やおいを読むのか?なぜGL・百合を読まないのか?という私の予てからの疑問に迫ってみたいと思います。

*1:

フラワー・オブ・ライフ (1) (ウィングス・コミックス)

フラワー・オブ・ライフ (1) (ウィングス・コミックス)

*2:

青い花 1巻 (F×COMICS)

青い花 1巻 (F×COMICS)

*3:

つぼみ VOL.5 (まんがタイムKRコミックス GLシリーズ)

つぼみ VOL.5 (まんがタイムKRコミックス GLシリーズ)

*4: